鹿追町の道の駅には、ちょっと不思議な光景がある。
水槽の中を、すっと悠然と泳ぐチョウザメたち。
キャビアで知られるあの魚が、十勝の地で飼育されているなんて——最初に見たときは正直、目を疑った。
一軒の寿司店で出会った“チョウザメのフルコース”
その夜向かったのは、町の寿司屋「びっくり寿司」。
一見すると町のどこにでもありそうな佇まい。だが扉をくぐると、まるで別世界が広がっていた。
大将が手にして見せてくれたのは、見事なチョウザメの身。
美しい白身に、わずかに走る赤いライン。包丁を入れる音が、静まり返った店内に心地よく響く。
皮の和え物とキリンラガーで乾杯
まず供されたのは、チョウザメの皮を使った前菜。
細切りの大根とキュウリに、少し甘めのタレが絡み、コリッとした皮の食感がアクセントになっている。
キクラゲのような歯ごたえに、思わず箸が止まらない。キリンラガーとの相性も抜群だ。
身と皮、それぞれの握りで味わう
続いては、握り。
身は白身魚のように淡く、しっとりとした甘み。
一方で皮の握りは、噛むほどに旨味が染み出してくる。ここはぜひ日本酒で合わせたい。
骨周りの唐揚げも登場し、ビールが再び進む。
天ぷらと、炙ったヒレで一献
さらに天ぷら。
チョウザメの身は、鱧を少し柔らかくしたような上品な口当たり。衣の軽さと素材の旨さが際立つ。
そして極めつけは、ヒレ酒。
炙ったヒレを熱燗に沈めると、香ばしい香りがふわりと立ちのぼる。
夜が少し深くなったような、そんな静かな時間が流れた。
そして大トリ、チョウザメのしゃぶしゃぶ
最後に登場したのは、しゃぶしゃぶ。
土鍋に昆布だしを張り、チョウザメの身をさっと湯にくぐらせる。
火を通すと、身がふわっと花開き、上品な脂がじんわりと滲み出す。
ポン酢をつけて口に運ぶと、淡い甘みと柔らかな食感が舌の上でとけていった。
鹿追の夜に、静かに訪れたごちそう時間
キャビアでしか知らなかった魚が、ここでは一尾まるごと味わえる。
前菜から握り、天ぷら、ヒレ酒、しゃぶしゃぶ——まるでコース料理のような流れ。
それでいて気取った雰囲気は一切なく、地元の寿司屋で静かに味わう一夜だった。

身をしゃぶり
香ばしヒレに 夜ふけゆく


基本情報


店名 | びっくり寿司 |
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住所 | 北海道河東郡鹿追町東町1丁目18 |
電話 | 0156-66-2941 |
営業時間 | 11:30~14:00/17:00~23:00 |
定休日 | 第1・第3木曜、不定休 |
特徴 | 寿司+定食・多彩なメニュー |
名物 | チョウザメ料理 |
価格 | ランチ660円~、寿司2,200円~ |