鹿追の町へと車を走らせる途中、「クックガルテン」の看板が目に入った。
時刻は10時40分。小腹が空いていた。
よし、入ろう。
店内は4人掛けのテーブルがいくつかと、カウンター席が3つ。小さな店だ。でも、窓から差し込む光と手作りの装飾が、なんだか温かい。
「やさい天そば」を注文した。大ぶりの野菜天ぷらが香ばしく揚がっていて、そばの香りとつゆが優しく絡み合う。
卓上に置かれていた自家製のにんにく入り南蛮味噌を少し添えてみた。
からい!
でも、これがまたいい。
目次
東京から鹿追へ、ある家族の決断
食事をしながら、店主のお母さんと話をした。
実はこのお店、もともと地元出身ではないという。1999年に東京から鹿追へ移住してきたそうだ。
きっかけは、妹さんの移住だった。学校になじめなかった子どもを連れて、妹さんが先に鹿追へ移った。その妹さんを訪ねるうちに何度もこの地を訪れるようになり、「自分たちも移り住みたい」と決意したのだという。
ご主人は北九州出身の元電気工事技術者。移住後は農家へと転身した。
最初はただの「そば屋さん」に立ち寄ったつもりだった。けれど、そこには一つの家族の物語と、大きな決断があった。
道の先に、何があるか
テイクアウトした南蛮味噌の瓶を手に車へ戻ると、鹿追の風が少しひんやりと頬を撫でた。
旅の途中、思いがけず心に残る出会いがある。だからこそ、道の先に何があるのか、いつも楽しみなのだ。

南蛮の
辛さと風と
鹿追かな